防災士の日記

行ってきました危機管理セミナー(後編&長編)

すっかりお待たせいたしました!
危機管理セミナー(防災トレーニング)の後半をご紹介します。今回は写真が盛りだくさん!内容も盛りだくさん!セミナーで教えていただいたことの一部を、ここでも紹介していきますが、具体的な方法や手順については、いずれ別ページにまとめる予定です。とはいえセミナーに参加してみるのが一番オススメですので、「テキストとして」というよりも「レポートとして」訓練の参考にしていただければ幸いです。

防災トレーニングレポート 搬送編~その1

訓練の前半は主にDIG(図上訓練)で盛り上がったものの、やはり主に座学だったこともあり、午後の「トレーニング」には大いに期待を膨らませていました。しかし、今考えれば、お昼休みのあの静けさは、嵐の前のなんとやら…だったんですねぇ。そんな風に振り返ってしまいたくなるほど、内容が充実しており「変な汗」をたくさんかいた訓練でした。ここではその概要をレポートします。
さて、最初に行ったのは「搬送訓練」。特に「脊髄を損傷している疑いのある傷病者の搬送」です。赤十字や消防署で受けられる応急救命講習では「脊髄を痛めている疑いのあるケガ人は、動かさずに救急車が来るのを待つ」という指導が一般的ですが、災害時などは救急車が来ないことを見込んで、市民自らがそれを実施することが求められるという考えから、実施されたものです。平時(災害時ではないとき)には、赤十字、消防署の指導の通り、動かさないのが懸命です。また、災害時でも安全が確保されているようであれば、無闇に移動する必要もありません。あくまで移動する必要があることを前提に実施されたものです。

バックボードに乗せるまで
まず、傷病者を発見!搬送作業中に自分が怪我をしては元も子もないので、周囲の安全を確認し、作業に入ります。ケガ人役は講師スタッフの方。あえて複雑な格好で意識を失っていますが、実際こういうことはよくあるそうです。オレンジのボードはバックボードといい、テレビや映画でしか見たこと無かったのですが、持ってみると結構重いですがしっかりしてます。 首を動かさないように注意しながら姿勢を直し、バックボードを背中に当てます。ケガ人の背中側から1人。正面から1人。頭を支える1人。計3人で実施しました。(ちなみに正面を担当している若造が私木村です。) 背後担当がベルトを持ち、正面担当が体の下に手を入れ、「いち、にの、サン!」でバックボードと一緒に体を起こします。首担当は体の動きに合せて、頭を回します。意識を失っていると、人はとても重くなります。さすが講師スタッフ。バッチリ体中の力を抜いていました。重かったです^^;
バックボードに固定
次はバックボードにケガ人を固定します。体と首を固定することで、脊髄損傷の悪化を防ぎます。固定に使用するのは布ガムテープ。ガムテープを巻きやすいように角材を下に入れています。テープを巻く箇所は下から「スネ」「膝の上」「骨盤が出ている部分」「肋骨のあたり」を、まず固定します。 次に胸部でタスキがけ状にテープを巻きます。首にかからないように気をつけます。この間も、首が動かないように注意を払います。先ほどまでダラ~ンとなっていた手はズボンの中に挟みこみます。搬送中に手がダラ~ンとなるのを防いでいます。 最後に頭の固定です。タオルをグルグル巻きにしてガムテープでとめたものを用意して、これを頭の左右に置き体と同じようにガムテープで固定します。このとき、顔に当たる部分はガムテープを半分に折って接着面が顔に付かないようにします。留める場所は「おでこ」「口の下」です。これで固定は完了!( ̄ー ̄)b
搬送には先導をつけて 搬送します。頭側に2人。足側に2人。先導に1人の計5人です。先導は、頭側の1人の肩に常に手を置きながら、進む方向の安全を確認しながら、指示します。肩に手を置いていると、感覚的に進む方向が分かることと「ストップ!」をかけるのが早いので、より安全に搬送することができます。運んでいると、足元も見えず、ケガ人の様子にも気を配らなければならないので、先導がいると助かります。
なお、ボードを持って立ち上がるときには、肩膝をついて、上を向いて立ち上がると腰を痛めないそうです。

防災トレーニングレポート 搬送編~その2 今度はブルーシートを使用した「脊髄損傷疑いのあるケガ人の搬送」です。読んでいて思った方も多いでしょうが、バックボードなどはそこらへんにあるものではありません。そこで手に入れやすいブルーシートを使用した搬送方法も訓練しました。
ブルーシートを体の下に敷きこむまで
傷病者の向きを変えるときには、先ほどと同じように気をつけます。まず、片側に傾け、傷病者の背中方向から蛇腹折にしたブルーシートを敷きこみます。同じ要領で反対側に向け、蛇腹を広げるとブルーシートの敷きこみは完了です。写真では首を支えていませんが、もちろん、首に気をつけて実施します。 同じ要領で反対側に向け、蛇腹を広げるとブルーシートの敷きこみは完了です。写真では首を支えていませんが、もちろん、首に気をつけて実施します。 ブルーシートのセンターに傷病者が乗るように敷きこんでいますので、両側からブルーシートをグルグル巻いていきます。これが「持ち手」になります。
両サイドをクルクル巻いて持ち手にする
クルクル巻いたブルーシートの頭側は、頭を包み込むように先で合せます。これで頭のブレを防止します。 6人で運びます。持つ部分は頭方向から「傷病者の目の位置」「胸」「骨盤」「膝の上」「すね」の箇所を、持つ手を近づけて持ちます。こうすると、搬送中に傷病者の体がブレにくくなります。 立ち上がり、搬送は先ほどと同じように実施します。運ばれる役もしてみましたが、首は安定しており、包み込まれた感じがして安心感もありました。

防災トレーニングレポート 救助編 搬送の訓練の次は「救助訓練」です。これは以前の日記でも扱ったことがあるので、簡単に済ませますが、バールと角材(ツーバイフォーの角材)をクサビを使用したものです。この技術は馬鹿にできないので、皆さん、一度はやってみるといいですよ♪

てこを使った救助。状況悪化防止の現状保持訓練 まずは下敷きになった子どもを救出します。以前の「てこ訓練」で経験した方がほとんどだったため、「スピード」も要求されました^^;「時間計りますからね」との言葉に、「聞いてないぞ・・・」と思いながら、「実際はゆっくりやってられませんよ」という台詞に「ごもっとも」という他ありませんでした。それでも、安全を確認しながら作業を進め、無事救出。救出後、確認してみたところ、使っていたクサビの半数近くが効いておらず、「最低限の固定点が抑えられていればいい」ということが分かりました。
次は「てこ」は使わず、状況を悪化させないために「現状保持」をする課題です。写真ではイスやらテーブルですが「それぞれが何百キロもあるものだと思ってください」とのこと。要は不安定なものを、固定、安定させるものです。
瓦礫の下に手を入れずに、ケガ人に負担がかからなくするように挑みましたが、結局時間切れ・・・。固定することができませんでした。スタッフさんに「どうやるのが正しいんですか?」と聞くと「ん~、これは難しいよねぇ」とだけ。「えええええええええええ?!」できない課題を出すとは・・・とツッコミつつ、後で聞くと「答えは無いんですよ。答えに向かうというよりは、この状況への対応力を引き出せるようにするのが大切なんです」とのこと。なるほどぉ!ちょっと感動しました。

防災トレーニングレポート スタート・トリアージ編 いよいよスタート・トリアージです。その前にトリアージについて少しお話しておきます。フランス語の「選別」を意味する言葉に由来して、特に救急医療現場で処置をする優先順位を決めるものです。「より多くの命を救う」ことを目的としています。「1人を救う間に多くの命を失ってはいけない」という考えに基づくもので、一見惨いようにも思われますが、ひとつでも多くの命を救うための究極の選択です。皆さんにも「トリアージ」を知って置いていただくことが大事だと考えています。
さて、トリアージについて簡単にご理解いただいたところで、「スタート」について。スタートとは、搬送段階の最初を担うから「スタート」というわけではなく、「Simple Triage And Rapid Treatment(簡単なトリアージと迅速な処置)」の頭文字をとったものです。いわゆる救出現場トリアージといわれるもので、医療トリアージが処置の順序を決めるのに対し、救出現場トリアージは救出の順序を決めるものです。それではその訓練の様子を大まかにご覧ください・・・。私のあせり具合が伝われば幸いです(苦笑)
どんよりした空気と声、ケガっぷりに、あせる・・・とにかくあせる・・・(反省) 「ある一室でケガ人が出たのでトリアージに向かう」という想定で、3人でトリアージチームを編成。部屋に向かい入ってみると・・・。どんより暗い部屋(停電を想定)に、瓦礫が散乱し、「助けてくれよぉ」「痛い・・・痛い・・・」という声が響きます。「歩ける人はいませんかぁ?!」「すぐに助けが来ますから!」と興奮したケガ人(役)をなだめながら、トリアージをしていきます。
室内を巡回していくと、なんと!「足が・・・」。これはもちろん作り物なのですが、なかなかどうして、その状況になると焦ります。「こ・・・これは・・・たすかるのか?救出できるのか?その前にどうしたらいいんだ・・・・?」と当たり前の判断もできなくなって、パニック状態。

一緒にいた2人と相談したり、助けられたりしながら、さらに前進!そこには、腹部に重症を追って腸が露出してしまっている人、骨折して骨が露出してしまっている人、ガラスが腕に刺さってしまっている人、さまざまひどい状況。さらに、呼吸の具合を聞き取ったり、顔色を見たりしてトリアージをしなければならないなか、助けを求める声に集中力が削がれます。「ああ、どうしたらいいのかわからん・・・」一通りトリアージを完了したあと、救出を担当する本部に報告するにも救助をするにあたり必要な情報が入っていなかったりと、さらに敗北感・・・。
相当変な汗、かきました・・・。
頭で分かっているのと、実際やるのとは大違いで、ましてや「足が切れている人がいる」とは頭の中で想像もしていなかったので「まさに想定外」。しかし、実際必要なのはそれで、対応する力が大いに求められました。

訓練後、指導をしていただいた講師の方とこんなやり取りをしました。

木村:「全くうまくできませんでした・・・。変な汗をかくばっかりで・・・」
講師:「やっぱり数をこなすしかありませんよ。実際にはもっとひどいことになっているかもしれないわけですからね。その状況で落ち着いてって考えたら、たくさんの状況を見て体験してみる他ないでしょうね。」
木村:「うまくできなかったのが悔しいです」
講師:「その気持ちが大事です。今度こそは!って思って何度もやることが大事なんです。でも、今度もうまくいかないんですけどね(笑)私達ももっと究極な状況を3日かけて訓練しましたから、1日ではそんなにできなくてあたり前なんです。」
木村:「まだまだやることはたくさんありそうですね(苦笑)」
講師:「でも、そういうことをやるんだということを多くの民間の方に知ってもらうことが、まず大事ですから。いいんです、それで。」
ただただ、なるほどと思うばかりでした。

というわけで、危機管理セミナー後半戦は実践的に技術的なスキルを磨くというよりも、とにかくあたって砕けるという感じで、終わりました。しかし、また機会があれば、「今度こそ!」の意気込みで挑んでまいります!でもやっぱり、訓練で「しまった!」を体験することが、実際の「しまった!」を防止することにつながるんだなと、強く感じた訓練でした。

すごく長くなってしまいましたが、これで危機管理セミナーの報告を終わります。
長丁場、ありがとうございました!
また、訓練で一緒に参加した皆さん!ありがとうございました!

ということで、今年の日記もこれが最後です。今年も長い日記にお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました!

来年もよろしくお願い申し上げます!

よいお年をお迎えくださいませ。


防災士 木村

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